虐殺器官

ここ1.5週間で虐殺器官を読んだ。読んだきっかけは、なんとなく有名だからだが、読んで良かったと思えるとても面白い作品だった。

 

繊細でナイーブな「ぼく」の視点で物語が進む。実存に悩む繊細で丁寧な心情描写、臨場感あるアクション描写、浮かび上がる世界の仕組みと読んでいてどんどん引き込まれていった。

 

この話のテーマとして罪と罰というのがある。主人公の場合、母に対する罪に対しては、自分が選択して殺したということを記憶に留めるということが罰として成立している。(終盤にさらなるパンチがあるが)特殊部隊として、殺してきた人々に対しては、国の命令として(自分の選択ではなく)殺しているので、その罪を背負えないことに関して自分の実存が揺るがさせるような悩みを感じている。(ルツィアによる救済も果たされない)

最後に、主人公が虐殺の文法によってアメリカを混沌に陥れる展開は、とても衝撃を受けたが、上記の罪と言えない罪に対する贖罪のような意味もこもっているのかなと感じた。アメリカをカオスにして、アメリカの人々の死を背負うという「選択」によって。

 

そんなこんなで、重厚な世界観、息をつかせぬ展開、丁寧な描写のとても面白い小説であり、またなんか書きたいことあったら書きます。